独語103 日本の獣医療・考

現在終了している獣医療過誤相談から、我が国の小動物臨床獣医学について気になることがあるので記します。
私は、公社・日本動物病院協会(JAHA)の国際セミナーで、診療の基本であるPOMR(Problem Oriented Medecal Record)、POS(Problem Oriented System)、POA(Problem Oriented Approach)【適切な日本語訳ががないが、病状の問題点を明らかにして順位をつけて診療する】に基づいて診療し、SOAP(Subjective Objective Assessment Plan)【主観的、客観的に評価したうえで診断・治療のプランを図る】で診療の経過と予後などを判断することを学んだ。誤診を防ぐための重要なツールとして認識されている。
当然、動物を診療した内容が、診療記録簿(カルテ)に確実に記録されていることが求められており、5年以上の保存義務がある。その内容は、飼い主の主訴(稟告)問診で食欲と摂食状態、活動性、視診(望診)で意識、皮膚・被毛の状態、触診を含めての身体一般検査で体重と栄養状態、体温、心拍数、股動脈圧、呼吸数と呼吸様式、脱水の有無と程度、排便・排尿の有無と状態などを五感を使ってバイタルサインをチェックし、必要なら、臨床検査の検便、検尿、血液検査や画像検査及び追加検査などを行って記録する。診断名も記録され、飼い主に対してインフォームドコンセント(説明し、理解を得て、同意を得る)される。これがセオリーです。
獣医療過誤相談で、提示された診療記録簿(カルテ)をチェックすると、記録内容が不備がある事例が多々あった。記録内容が判読できないため通訳(確認)が必要なもの、治療経過が良好なのか悪化傾向なのか不明なもの、治療内容が分かりにくいもの、診断名がないもの、予後不良や死亡原因が不明なものなどがあり、カルテとは言えない小さなノートに少しだけ記載されたものがあった。中には、治療しても救命できない症例に、数パーセント救命できる可能性があるとして、強引に治療しその挙句死に至らしめた事例や、苦痛を取り除かないで、無理やり処置をして、さらなる苦痛を与えてしまった動物虐待的な治療?を行った事例もある。
2000年から相談を始めた当初は、カルテがあればいいほうで、内容も前述のものや、かなりいい加減のものがあったから対処に悩まされた。2020年代になっても、少し減った感があるが、記載内容の不備なカルテが散見された。
このことは、我が国の獣医学教育でPOMRシステムが標準化されていないのではと言わざるを得ない。それ故、今後も獣医療過誤の事例が、繰り返し起こる可能性があると推察される。ということで、獣医大学で、これをしっかり教育してもらうことが重要です。
獣医療過誤相談を終了した今でも、相談の依頼が繰り返しあるので、この問題への対応は、日本獣医師会、都道府県獣医師会、日本小動物獣医師会、日本動物病院協会、全ての獣医大学などが、獣医事問題対策委員会などを設置して対応することが最適です。さらに、獣医大学に獣医事問題の他に動物虐待などの対応できる法獣医学の講座を設けるよう要望します。

悲しんでいるペットの飼い主のため、臨床獣医学の信頼のため、よりよい動物との共生社会のために