独語76 ややこしい動愛法改正

「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法=動愛法)を、動物にとってより良い法律を目指して、過去の改正のたびに、国会議員に陳情してきました。この法律が、4回も改正されたが、被虐待動物の救済と保護、飼養動物虐待した者を罰則の他に飼育禁止、ペット法からの脱却、畜産動物・実験動物の飼養管理の問題、その他諸々について、私が求める内容に、なかなか到達しない(できない)情けない内容にとどまっている。各改正時には、何らかのトピックとなる(目立つ)項目が主な改正点となり、それ以外は曖昧になったり、改正できずに積み残されて来た。

過去を振り返り、識者の助言を聞いたりして考察すると、以下のややこしい問題が出てきた。
●「動愛法」の前身である「動物の保護及び管理に関する法律」が、議員立法で制定されており、「動物の愛護及び管理に関する法律」と改称されたが、そのまま踏襲されたため、内閣法に変換できていない。
●「動愛法」は、国会で全会一致(全国会議員の賛成)を旨とし、反対があれば、その項目は削除される。削除された項目は、未来永劫削除されたままになる可能性がある。多数決で、決するのではない。
●過去に、中央環境審議会・動物愛護部会で26回の審議を重ね、素晴らしい法案(内閣法?)の原型が示された。が、実際は、国会議員の横やりで内容が大きく変更されてしまった。この時に、内閣法にすべきとの声があった。
●「動愛法」は、当初からペット法と呼称されたことによる弊害がある。愛護動物の範疇にあるにもかかわらず、実験動物と畜産動物(農場動物)を除外扱いした。
実験動物の福祉については、文科省、厚労省、農水省、その他の省庁及び族議員と関係者(特に、製薬、医療関係者=研究者)の激しい反対意見のために、3R(Replacement、Refinement、Reduction)のみの記載だけに留まり、実効性が確認できない状態である。研究・開発を阻止するものではないにも関わらず、3R以外の項目の議論は、全くできない状態にある。
畜産動物(農場動物)の福祉については、東京オリンピック開催が決まったときに、農水省が主導して。乳用牛、肉牛、養豚、採卵鶏、ブロイラー(肉用鶏)についてアニマルウエルフェアの検討会が開催された。OIE=WOAH(World Organization for Animal Health、世界動物保健機関)が提唱する「5つの自由」に基づく家畜の飼養管理を示したが、国民がこのことを知らないから提示しただけで検討会を終えた。この際、族議員や業界から猛烈で激しい圧力が寄せられた。時の農水大臣が、養鶏業者から賄賂を受領した犯罪が起こった。未だに、畜産動物の福祉は見逃され、農場動物にとって劣悪な飼養管理の「工場的畜産」が容認され、経済効率優先のままである。食の安心、安全のためにも改善が必要だが、族議員や業界からの猛烈な反対が、繰り返される懸念がある。
野生動物の飼養と取扱いに関して、もっと議論すべきであり整理する必要がある。展示業の問題、飼育可能の野生動物以外は飼育禁止、種の保存と生態系保全、密輸防止・阻止、動物種による飼養管理とハンドリング、動物園と類似動物園など。さらに、動物園・水族館法の制定を考慮したい。
●第二種動物取扱業の廃止。動物保護を目的にして金銭授受が顕著で、ビジネス化しているため。
●愛護は、福祉、保護、動物虐待防止とは意味が異なっており曖昧さが目立つので、「動愛法」の名称変更を求めたい。
●熱心に取り組んでくださる議員や識者等に、少しの意見が異なるだけにもかかわらず、執拗且長時間のバッシングや恫喝的誹謗中傷を行うクレーマー(自称動物愛護家など)がいる。困ったことに、環境省の動物愛護管理室にも、長時間電話攻勢し業務の妨害をする輩がいる。結果、より良いものにしようとする意欲を削いでしまう。
●動物の愛護・福祉・保護する団体及び個人の中には、動物の立場に立って考えているはずだが、夫々の立場からの主張を述べるのみで、他者の意見を聞く耳もなく排除するなどがあり、意見調整が困難で纏まらない。悩ましいことだが現実である。