コロナ禍で、休止していた多度大社の上げ馬神事が再開され、一頭の馬が前肢骨折して安楽殺された。そのため、SNSで非難ごうごう炎上している。
私は、2002(平成14)年から2018(平成30)年まで、坂上の高すぎる垂直な壁を傾斜させるか高さを低くするなどを求め、現状のままだと人馬にとって危険であり、文化財としてふさわしくないと指摘し続けてきた。(独語5も参照)
2018(平成30)年に、多度でTTP(つづけよう、たどまつり、プロジェクト)の創刊号を見つけた。表紙に多度祭りのMIKATA、未来永劫続く祭りのあり方を探求し、共感できる環境、仲間を増やし、歴史ある多度祭りを正しく伝承します。と記され。さらに、1,安心で安全な取組み、2,継承者育成への取組み、3,積極的な祭事歴史解釈への取組み、4,祭りファンを増やす取組み、が書かれていた。このTTPを信頼し、翌年(2019)年から調査を休止することにした。が、コロナ自粛で上げ馬神事が休止され、心配がなくなっていた。
多度大社は、多くの反響から、「本年度の上げ馬神事について」を発出した。その概略は、
1、上げ馬神事とは(奉納を受ける神社・奉納される御厨の関係)
700年近い歴史と、御厨という氏子組織が、神社に奉納する神事で、三重県の無形民俗文化財に指定されている。
2、上げ馬神事についての遵守事項
御厨総代会は、動物の愛護及び管理に関する法律と他法をもとにして、5項目の遵守事項を定めている。祭馬の適正な取り扱いを記したチラシ文書を御厨全戸に回覧し周知徹底を行った。祭馬は、馬主から各御厨地区が借り受け、青年会・御厨氏子が飼養管理する。獣医師及び装蹄師を常時待機させている。
その他、意見への反論とそれに対する私のコメント
1、有料拝観席の経緯について
走路両側に地元優先の桟敷席があり、観光客用の有料拝観席があるが、非営利目的だとしている。関係者以外による馬をたたく・驚かすなどの行為があったとして、立ち入り禁止にした。
●実際は、祭事関係者による暴力行為のほうが圧倒的に多かったし、観客が馬への暴力を行ったことを見たことがない。ただ、祭馬が走路を逆走し5人の重軽傷者が出た大事故が起こった以降、立ち入り禁止区域が拡大したことは承知している。
2、最近から始められたとの風説について
南北朝以来長い歴史を重ねた神事のみ記す。
●日本の在来馬しかいない時代から、サラブレッドを使うようになって、現在の形態に変わったはずだが、そのことに触れず、あえて避けている。
3、負傷祭馬について
祭馬の一頭が、転倒負傷し、当該地区の祭事関係者が、適切に対応し、獣医師の診察を受け、他所で適切な処置が行われた。
●原因究明するでなく、また責任の所在を明示せず、獣医師に馬の処分(安楽殺)を委ねた。
4、上げ坂の高さについて
適切な高さに削る「坂爪掛」という儀式の説明のみ記載。
●坂上の垂直な壁の高さの数値を具体的に説明していない。この壁の構造への批判には、全く答えておらず、意図的に無視している。
5、祭馬の取り扱い
多度大社は、適正に飼養されていると承知のみ記載
6、過去の動画・画像に基づくご意見について
動画等が、本年度のものとして投稿されるので、詳細について以下の通りです
平成16年以降三重県教育委員会により実態調査
平成16年 上げ馬神事事故防止対策協議会設立
平成22年 県文化財保護審議会が現地視察
平成22年 馬繋場の移動 馬の取り扱いについて誰でも見ることが出来る施設として整備。人馬の安全及び事故防止のため馬の通行順路を変更
平成22年 動物の愛護及び管理に関する法律に鑑み、祭馬に対する虐待等を監視すべく、監視委員会設立(7名)
平成23年1月20日 教育委員会より勧告
平成23年 監視委員会 7名増員 (合計14名)
平成23年7月12日 教育委員会より助言
平成24年 三重県無形民俗文化財としての価値を正しく継承すべく進行役設立
●上記それぞれの内容説明がないが、この通りならば、それ以降の上げ馬神事が、人馬にとって安全・安心なものになっているはず。しかし、現状のままでは動画のような事態が起こってしまう。現実は、殺処分される馬が続出し、怪我人も出ている。
結びに
奉納団体・関係団体との連携を密に、動物の愛護及び管理に関する法律をはじめとする関係法規の遵守を促すことを以て、歴史的価値及び文化的価値が損なわれることの無いよう努めてまいります。
●どんなに批判や要望意見があっても、また、改めるべきとの指摘に対しても徹底的に無視し、改めることなく現状のまま開催することの意思表示としか思えない。坂上の高い垂直な壁がある限り、馬にこの壁に挑ませることは、非常に過酷なもので「馬を酷使」(虐待)することになる。
文献に、「上げ坂」との記述があり、昔は単に坂を駆け上がったと考えるのが妥当であり、それ故、坂上の壁を除去し、坂だけにして安全・安心な構造にしていただき、我が国の恥さらしのクレージーな祭りから脱却し、誇りある新しい無形民俗文化財にしてくださるよう切望します。