独語50 国公立獣医大学統廃合問題

本年(令和4年)2月の日本獣医師会雑誌に、「国際的な獣医学教育第三者評価機関の認証取得とわが国の獣医学教育改革」の論説があった。
本来、獣医学教育は、学部で行うことが望まれているが、我が国では大きく異なっているのが現実であるが、獣医学教育の改善・充実方策に関する意見がまとまり、「改善の具体的方策」が提示された。それは、①モデル・コア・カリキュラムの策定、②分野別第三者評価の導入による獣医学教育の質保証、③大学間連携による教育研究体制の充実、④共用試験の導入、⑤学内教育環境の充実と外部機関との連携による臨床教育の充実、である。
獣医学教育モデル・コア・カリキュラムの下、大学間連携は、山口大学・鹿児島大学共同獣医学部、岩手大学・東京農工大学共同獣医学部、北海道大学・帯広畜産大学共同獣医学課程、岐阜大学・鳥取大学共同獣医学科で、この国立系4大学群による獣医学部等が設置された。共用試験には、NPO法人獣医系大学間獣医学教育支援機構が設置され、参加型臨床実習をする学生の基本的知識を評価するvetCBT及び基本的な臨床技能を評価するvetOSCEを開始している。この仕組みは、国立大学獣医学科の一学年定員が30~40名しかないので、学部にするために連携が必要で、オンライン等を活用して授業が行われている。これによって、一学年の学生定員が60~80名、教員が70~90名程度の教育組織となっている。しかし、東京大学と大阪府立大学は、この仕組みに入っていない。当然、私立大学も入っていない。

もう随分昔になるが、獣医学教育及び研究体制の充実発展させるために、国公立獣医系大学を統廃合して学部にし、一学年の定員を80~100名、教員を100名程度にする案が出て、東北大学や福岡大学などに新設する案など実現に向けて具体的に議論された。しかし、各大学のOB達が、母校がなくなるとのことで、反対の意見を国会議員などへのロビー活動が活発に行われたために、この計画は頓挫し、うやむやになってしまったと聞いている。誠に残念な結果である。

私は、現状のような仕組みはやむを得ないものと思うが、本音はまやかし的でイミテーションにしか見えない。この仕組みで、国際的評価が得られるのだろうか? 危惧せざるを得ない。
今後の我が国の獣医界にとって禍根を残さないために、日本獣医師会、各学会などがもう一度考えていただき、取り組んでもらいたいと願っている。