今国会で、出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正に向けて議論されていた。不法入国や不法残留の外国人が増加しており、出入国在留管理庁の入管施設に身柄を収容し、国外退去処分となった者の中には、難民認定申請を繰り返して送還を拒否する者が7割いて長期収容されている。このため、難民認定申請を3回以下に制限して長期収容者を減らし、送還までの間は「管理人」の監督下で入管施設以外で生活できる制度を新設し、逃亡者には罰則を科すことなどを盛り込んだ改正案である。
これまで、家庭を持ち平穏に生活している外国人が、国内で生まれた子供と引き離されて国外に退去された事例、入管施設で収容された者が、体調不良(病気)なったにもかかわらず治療されず死亡した事例、2020年8月から名古屋出入国在留管理局の施設に収容されたスリランカ人女性が体調不良で今年3月に死亡したなどがある。社会から隔絶され長期収容された者の中には、落胆して自死したり精神的に障害を負ったなどの他、入管施設職員による入所者に対する所業の問題が報道された。入所者の人権を無視し極めて非人道的処遇を行ったことは、正義に反していると言わざるを得ない。
国内で犯罪を行った者はともかく、難を逃れて入国した、留学途中で挫折した、外国人技能実習制度(見直しが必要)で入国したが離職したなど何らかの理由で入国している。また、長年にわたって生活基盤を築いている者(オーバーステイ)などを犯罪者扱いにして不法滞在者?とし、発見次第、国外退去処分にしようとしている感がある。
諸外国に比べ、難民認定が極端に少ないのは、収容者個人の事情に配慮せず無視し、一律に不法滞在者とみなしていると思わざるを得ない。不法滞在者をさっさと国外へ排除(送致)して、すっきりしようとすることを入管法改正で正当化する意図が感じられる。出入国在留管理庁とその入管施設の権限を強化し、職員の暴挙などを見逃す仕組みではないかと危惧している。私は、入管法の改正が必要と思っているが、その内容が問題なのである。
我が国は、多くの外国人の力が必要であり、特定技能者のみならず多くの人材を求めている。民主主義と基本的人権を尊重する国家であってもらいたい。
死亡したスリランカ人女性の妹2人が来日し、名古屋の入管施設に行って、死亡したいきさつなどを尋ねたが、当局は全く回答しなかった。同行した国会議員(国民の代表)は、収容部屋など見ることを拒否された。出入国在留管理庁は、何か後ろめたい問題があるから、開示することを拒んでいるとしか思えない。
5月18日、今国会で入管法改正の採決を行わないことになったと報道された。法改正ができなかった理由は、衆院法務委員会で、野党が求めるスリランカ人女性の死亡に関して、出入国在留管理庁が正しい情報やビデオなどの開示を拒み説明責任を果たさなかったからである。