独語28 獣医療過誤相談

私は、複数の弁護士さんから動物病院と獣医師の診療について相談を稀に受けることがある。獣医療行為がセオリーに適ったものか否か、過失や誤解などの有無、裁判すべきか回避すべきかなどを弁護士及び飼い主が判断するためである。裁判する飼い主の殆どは、獣医師の医療行為とその説明に納得しないか不信や怒りを抱いているからである。
診療は、飼い主の主訴、問診で一般状態(食欲や活動性など)、身体一般検査〔視診(望診)、触診、打診、聴診、栄養状態、体重、体温、呼吸、心拍、股動脈圧など〕臨床検査(検便、検尿、血液検査、生化学的検査)、追加検査(レントゲン、超音波、心電図、その他)などを行い鑑別診断、確定診断、インフォームドコンセント(説明、理解、同意)、治療(内科的、外科的)し、予後判断や治療の評価を行う。POMR、SOAPに基づく診療がセオリーだが、暫定診断で治療することもある。対応困難な事例は、セカンドオピニオンや対応可能な動物病院へ紹介することが望まれる。
診療簿(カルテ)は、上記のすべてを記録することが望まれるが、実際には正常や同じ所見がある場合には記録しないことがある。特に入院中や継続診療の際、症状や所見に変化がない場合はポイントだけを記載することがあるが、治療経過の変化を明示するよう求められている。診療簿の保存義務があり、後日チェックできることが大切である。
獣医療相談は、飼い主及び弁護士から詳しく聞いたうえで、任意提出或いは証拠保全で得られたカルテや画像等のデータをチェックして、問題点を探り過誤の有無などを指摘することで、裁判の是非等の判断をしやすくすることである。独語27の詐欺的獣医療裁判の事例は特別なものと言えるが、それに近いものから正当に診療していると思われるものまで様々である。裁判になった事例の殆どは、診療記録が杜撰でわかりにくく、そのうえインフォームドコンセントががなされていない。その他、独善的で威圧的対応、不治或いは治癒困難な症例への過剰診療?、苦痛の軽減なく苦悶状態の改善なく持続させるなどの虐待的処置、未熟な獣医療技術などである。
獣医療過誤の判断は、私自身が持っている臨床獣医学の知識技術で判断するしかないので、それを承知の上で相談に乗っている。学際的で高度な最新獣医療知識技術を持ってないから相談に応じるべきではないとの意見があるが、裁判所への意見書・陳述書は誰でも書ける。裁判官がそれを参考にするか否か、判決に反映されるかは不明であるが、判決の理由で知ることができる。
法獣医学は、獣医大学に講座も研究室もなく学会もない。それ故、日本獣医師会内に獣医療過誤、獣医事問題に対応する部署(委員会など)を設置し、飼い主や弁護士が相談できる窓口になってもらいたいと願っている。
しかしながら、現時点ではこの仕組みがないので、この問題に対応してくださる獣医師を求められているから、何方か名乗りを上げてくださる先生はいませんか?

問い合わせは: mohejimoheji-aoki@nifty.com