独語25 豚の災難

1、豚熱(豚コレラ)CSF(Classical Swine Fever)
2018年9月、26年ぶりに豚熱(豚コレラ)の発生が確認され、当該養豚場のすべての豚(感染がなく健康な豚も)が殺処分された後で埋却(穴を掘って埋める)された。人が食べても問題ないが、豚肉の流通を介して他の養豚場へ感染が拡大する恐れがあるからである。実際に、豚熱は、県境を越えて次々に感染が拡大して発生が認められ、その都度全頭殺処分が繰り返された。そのうえイノシシにも感染が認められ、各地の養豚場に感染を広げる原因となった。
豚熱が最初に発生した当時は、ワクチン接種は行われていなかったが、その後イノシシには経口ワクチンを生息山野に散布した。豚には、2019年10月からワクチン接種されたが義務でなく当該知事の判断によることとした。よって、我が国から豚熱が撲滅できるかは不明である。
殆どの養豚業者は、豚舎内で群飼し蜜飼いしているので、豚熱のようなウイルス性感染症が発生すると一気に感染が拡大する心配がある。他方の放牧養豚は、イノシシの侵入・接触を徹底的に避ける必要がある。

2、養豚業者の悲惨な飼養管理
豚の本来の行動は、イノシシと同様に野山を走り回り、穴を掘り起こして土中のエサを探して食べ、コーンなどの穀物、イモなど他に野菜や草を好んで食べるなどが本来の姿である。しかしながら、我が国の養豚の現状は、豚の生態・習性・生理を無視し、豚本来の行動をさせないで生産効率重視の集約的、工場的な養豚となっている。
繁殖用豚は、生後約8か月までは豚舎内で群飼され、その後ストール(幅0.6~0.7m、長さ2.0~2.1mで身動きできない枠)に閉じ込められ人工授精で妊娠し、出産が近づいたら出産用ストール(母豚が横になって授乳できる幅で転回できない枠)で出産し3~4週間授乳した後、再び豚舎内に戻され群飼され次の繁殖期(発情)まで動き回れる。所謂、出産マシーンとなっている。◎どうぞ、この実態を想像してください。
授乳中の子豚は、ストールの隙間から出入りできおっぱいを吸える、寒い時には温源を設え母豚に近寄らないようにし、母豚につぶされないようにしている。子豚は、誕生後すぐに犬歯切断と断尾され、オスは去勢されるのが殆どで3~4週間のの授乳を終えると育成用・肥育用の豚舎に移動される。
肥育豚は、コンクリートの床でおもちゃなどない豚舎内で群飼され蜜飼(多頭飼育)される。そのため、予防的にいろいろな添加物給与や薬剤投与する必要がある。生後約6か月で体重が100~110㎏になると屠殺され肉となるが未成熟なので肉質は柔らかい。我が国の養豚の殆どは、このように誕生から屠殺されるまで放牧しないので土や草などに触れることなく一生を終えさせているのが現実で、豚の福祉に反しており配慮する気配は全くない。
この飼養形態に反して一部の養豚業者は、豚を放牧して飼養しており、犬歯切断や断尾などは行う必要がないので行っていない。放牧豚は、土や草などを食べ走り回っているので添加物等給与の必要なく健康的である。屠殺時期は同じなので肉質は柔らかいが、脂肪が少し黄色味を帯びるが味は変わらない。

世界動物保健機関(WOAH)=国際獣疫事務局(OIE)は、このような養豚をやめて5つの自由に基づく飼養管理にすべきであるとしている。が、農水省と養豚業者は、農場動物のアニマルウエルフェア(動物福祉)を検討しただけで、この国際的要望に耳を傾けることなく、このような、集約的、工場的畜産を容認し、改める気配は全くない。
※食の安全・安心のため、アニマルウエルフェア(動物福祉)に配慮だけでなく確実に5つの自由に基づく飼養管理をして得られたフリーダム・フードを求めたい。

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