動物保護に関わる方や団体の中に、高齢者がペット(伴侶動物、コンパニオンアニマル)を飼育することに異を唱えている。高齢者本人の入院、死亡、施設入所などで、ペットが残されることが多く、その対応に苦慮しているとのこと。この理由から、高齢者はペットを飼わないでほしいので、高齢者に保護犬・猫を譲渡しないとする動物保護団体がある。
この問題の議論の中で、高齢者がペットを飼うにあたり、誓約書を書いてもらうのが良いとする意見が出て、多くの方々が賛同した。誓約書は、借金をする時や賃貸住宅を借りる時と同様に保証人を必要とし、飼養管理困難になった際に飼養管理を委託する人、死亡したときにあらかじめ依頼した譲渡先の個人名を記入するものです。私は、このことに違和感を抱いております。
高齢者が伴侶動物との生活で得られる様々なメリットは、孤独や寂しさからの解放、癒しや生きがい、引き籠り防止、散歩や外出機会の増加で体力の維持及び強化、犬友達や近隣との対話促進、ペットの世話で生活リズムの安定、ペットと生活することで生活の質(QOL)が高まるなどが知られている。これらの恩恵を受けていても、高齢者はいつの間にか体力や意欲の低下、認知機能の低下などからペットの世話が困難になる。病気入院、施設入所、死去などで、ペットが残置されるなどが起こる。このことは、他世代より高いのは当然で、独居や高齢家族であれば問題が深刻化するが、他世代でも起こりうることである。ペットが取り残されることは、前述のほかに経済的困窮、家庭崩壊、生活破綻、被災等で家屋損壊・喪失などがある。
人は、どんな境遇であっても、ハンディキャップがあっても、ホームレスであっても、性別や年齢にかかわらず、ペットの世話ができるならば、コンパニオンアニマルを飼育する権利と自由がある。これが、民主主義法治国家の共通する標準的認識である。人と動物との相互作用に関する国際連合(IAHAIO=International Association of Human-Animal Interaction Organization)のジュネーブ宣言(1995年)に明記されている。欧米諸国では、残置ペット、放浪ペットなどの飼い主不明ペットに対しては、動物保護団体(SPCA、HSなど)が積極的に対応し、行政はサブ的に対応している感がある。
この問題は、あらゆる世代で起こりうることなので、高齢者だけに誓約書を求めることは、自由と権利の侵害であり、差別を増強させる。ペット動物を愛する者は、ペットだけでなく、様々な人生を送って終末を迎える高齢者に、優しい対応をしていただきたい。
高齢者の中には、自分が前述のような事態に陥った時、残されるペットを託すために、如何にすべきかを尋ねられることがある。家族や知人などに引き取られない場合は、当院で引き取って新しい家族を探して譲渡するか、当院で飼い続けることにしている。と答えている。また、残されるペットのために、供託や預託できるペット後見制度があれば、利用したいと考えている方もいます。(今後の課題)
ペットは、個人のペットから社会のペットの意識を持って飼育すること。
家族の他に近隣、知人と仲良くしてくだされば、引き取られ易くなり、そのペットの幸せにつながります。