動物の雄の睾丸(精巣)切除(去勢手術)は、家畜(畜産動物)ではごく普通に行われているが、その理由については割愛させていただく。ペット(コンパニオン・アニマル)は、飼い主の意思で去勢するか否かが決まるが、動物が、去勢手術を望むことはない。
メリットは、
1、生後6か月未満での手術で
①オス特有の問題行動の予防がかなりできる。
②子犬特有の仕草がいつまでも残り、可愛く飼いやすいファミリーアニマルになる。
③オス特有の病気(前立腺、睾丸、肛門周囲の炎症や腫瘍、性ホルモンアンバランスによる皮膚疾患)や性病、(性器肉腫など)の予防ができる。
2、すでに問題行動に悩まされている場合、矯正(治療)の第一歩となる。
支配的な咬みつきなどの攻撃、縄張りマーキング(ネコのスプレーイングも)、発情期の脱走・逃走、性的行動、喧嘩・闘争、破壊的行動などの抑制。
※去勢してから、陽性強化法による基本的な服従訓練(しつけ)を行う。体罰や怒鳴るなどの強制的な訓練は、反抗的になったりこじらせるので、絶対に行わないこと。
3、前立腺の肥大・炎症・腫瘍、睾丸炎・腫瘍、肛門周囲の慢性皮膚炎・腫瘍などの治療。
4、性的・生理的ストレスがなくなるので、性格や生活態度が落ち着き飼いやすくなる。
しつけ訓練がしやすくなるので、問題行動の矯正がしやすくなる。
5、問題行動に起因する喧嘩(闘争)傷や事故を減らすことになる。
6、オス猫の強烈な尿の臭いが減弱し、不快な悩みが減る。
7、数年の延命が認められる。
デメリットは、
1、この子の子供を望んでも、叶えることができない(繁殖不可)。
2、性的・生理的ストレスが減るため、生活と性格が安定するので、肥満傾向になる。
時々、睾丸が陰嚢に降下せず、鼠径部、腹壁に停留していたり、腹腔内に停留しているものがいる。陰嚢、鼠径部、腹壁にある睾丸は簡単に切除できるが、腹腔内にある睾丸切除は飛躍的に難度が上がり、時には停留睾丸を見つけ難いことがある。
停留睾丸が単なる肥大でなく腫瘍化することがある。腫瘍によっては骨髄が抑制され不治の再生不良性貧血になり、たとえ手術が成功しても、生きてもらうためには輸血を繰り返すしかないこともある。また、転移があると、この心配があるので。繰り返し検診が必要となる。だが、猫では、このような事例に遭遇したことはない。
ということで、繁殖を希望する場合を除き、ファミリーペットとして、家族の一員として迎えるのであれば、オスの去勢手術を6か月までに行うことをお勧めします。特に、停留睾丸は必ず切除してください。この子の幸せためにも、後で後悔しないためにも。